マイルス・デイヴィス「Relaxin' With The Miles Davis Quintet」
マイルス・デイヴィスに最初に出会ったのは、世紀の大名盤「カインド・オブ・ブルー」からだった。正直、つまらなかった。何も面白くない。盛り上がりにかける。陰気。そんな気がした。
それからしばらくはマイルスを避けていた。アレなら、もういいかなって、思ってた。
町田のBOOKOFFでたまたま「Relaxin'」を見かけたのは、「ブルー」から3ヶ月ほど後だろうか。
ジャケットを見て、ザ・ハイロウズの「Relaxin With The High-Lows」のパロディ元だなと気づき、試しに買ってみる。こういう時に買うCDは100パーセント当たりなのだ。
聞いてみるとビックリした。「ブルー」と全然ちゃうやん!何これ!ってなる。
その時は知らなかったのだが、「カインド・オブ・ブルー」はモード・ジャズという、当時では画期的なジャズをやっていた。コード進行による作曲ではなく、音階に基づいた作曲。対して、「Relaxin'」は、正道的なハード・バップだった。めくるめくコード進行によるメロディアスで劇的な音楽。そう、まるで正反対なのだ。
「Relaxin'」を聞いてから、ハード・バップという音楽が気に入り、いつしかそればっかり聞くようになった。モードに入るのはもっと先立った。
「Relaxin'」は、マイルス・デイヴィスのマラソン・セッションの4部作のうちのひとつ。他のアルバムの名前も、「Workin'」「Cookin'」「Steamin'」となる。そのままリラックスする、働く、料理する、煙草吸う、となり、人の1日を表現しているよう。
マイルス・デイヴィスが、プレスティッジから大手レコード会社コロンビアに移籍する際に、残っていたレコード契約の消化のために行われたのが、マラソンセッション。そう聞くと、クオリティ低いんちゃうと思われるが、全然そんなことないです。
The Miles Davis Quintet - You're my everything - YouTube
曲の頭に、マイルスの「そこちゃう、ブロックコードや」という訂正の声が入る。ピアノのレッド・ガーランドのブロック・コードから始まる。ガーランドはブロック・コードが上手い。そして入るのがミュートトランペットのマイルス。マイルスのミュートは1級品だった。途中でジョン・コルトレーンのサックスが場を引き締め、なおかつバラードを続ける。ベースはポール・チェンバース、ドラマーはフィリー・ジョー・ジョーンズ。ここでは、目立たないが、最高のリズムセクションだ。
この時代のマイルス・デイヴィスクインテットは、全時代で最強の黄金クインテットであったに違いない。50年代マイルスが一番好きな私はそう主張する。ハード・バップという演目の元に、一丸となって邁進する。マイルスの統制力の高さもさる事ながら、各プレイヤーの技量、個性が上手く出ている。ハード・バップの手本である。
If I Were A Bell - The Miles Davis Quintet - YouTube
イントロの学校のベルのようなサウンドからテンションが高くなる。何時聞いても、聞き飽きない。
テンションの高い演奏が続く。ブルースと、スウィング感と、熱気が綯い交ぜになっている。聞くことを本当にオススメします。
他の4部作もそのうち書いておきます。